第29回放送 平成28年8月25日(木)
歯の健康と飲料水
あなたのお口を守り隊
Ⅰ歯と飲料水
1)う蝕との関係
甘いものは虫歯になりやすいというのは常識ですが、お菓子やコーヒー、紅茶に入れる砂糖の量などには気をつけるものの、ジュースなどの清涼飲料水に含まれる砂糖の量となるとあまり考えたことのない方も多いかもしれません。一缶の飲料の中に多いもので40g(角砂糖1個3~4グラム)を越える砂糖が含まれています。炭酸飲料水角砂糖15個、オレンジジュース角砂糖12個、缶コーヒー角砂糖12個、これは一杯のコーヒーや紅茶に入れる砂糖の6から7倍の量になります。この事実からむし歯のとの関連を考えないわけにはいきません。
2)酸蝕
pHが5.5以下だと酸蝕歯の危険性
コカ・コーラは炭酸飲料が歯を溶かすことを認めています。それではなぜ歯や骨が溶けると言えるのか?これについては酸性か中性かアルカリ性を示すpHが関係してきます。pH値は7が中性です。数字が7より小さいと酸性、大きいとアルカリ性になります。歯の表面のエナメル質は、5.5以下の酸性の飲食物に触れることで、脱灰し溶けてしまいます。
炭酸飲料の代表でもあるコカ・コーラはのpHはだいたい2.2あたりでしょうか。強い酸性で有名な胃液のpHは1~1.5と言われていますから、胃液に準ずる強い酸性と言えるかもしれません。又意外と知られていないのが栄養ドリンクの酸性です。pH2.5を示しておりかなりの高値です。その他、黒酢飲料3.1、ワインも要注意です。もちろん、飲み過ぎた場合は数秒程度の蓄積とは言え、酸性の液体に晒す時間が長くなりますから影響は出てくるでしょう。酸蝕歯になるリスクが格段に高くなります。酸蝕歯は歯周病や虫歯を手助けしてしまいますから防がなくてはいけません。炭酸飲料を飲み過ぎて良いことはありませんからほどほどにするのが良いです。習慣性、常用はおすすめできません。
あとは唾液の分泌が重要です。炭酸飲料を飲んだ後は少なからず歯が溶けていますから唾液による再石灰化を促さなくてはいけません。
3)イオン飲料とむし歯
小児のむし歯は過去20年にわたり確実に減少しています。これは養育者などの口腔保健に対する関心が高まった結果と考えられますが,ここへきて新たな問題が発生しています。小児は口腔管理のよいグループと悪いグループに大別され,悪い方の群では本来むし歯になり難い下の前歯がむし歯になってしまっています。この傾向は乳幼児のみでなく学童にも認められており、この原因の1つとしてイオン飲料の飲み方が関係していると考えられています。
①乳幼児とイオン飲料
テレビのコマーシャルなどにより,イオン飲料は身体によいと考えている人は多いです。汗をかいたときや,入浴後やのどが渇いたときに乳幼児に積極的に与える傾向があります。イオン飲料の組成は経口維持輸液に比べ,他などの電解質はやや低値かほぼ同程度ですが,浸透圧が高値のため水電解質の吸収の点でやや劣りますが,下痢や嘔吐による軽度の脱水に使用されます。普通の食事をしている乳幼児にこれを与えると電解質が多くなりかえってのどが渇いてしまい、イオン飲料を絶えず飲んでいなければいられない状態となってしまいます。イオン飲料は経口維持輸液よりも糖分の濃度が高く甘味がより強いので,習慣化する傾向があります。イオン飲料のpHは3.6-4.6と低く,pH5.5以下ではエナメル質の脱灰が起こりむし歯になりやすいことなどより,イオン飲料が絶えず口腔内に残存するとむし歯の原因となります。夜寝る前や,夜中に起きたときにもこれを与えると益々この傾向を助長する結果になってしまいます。
もう一つの原因として下痢や嘔吐で小児科医を受診したときに輸液が必要でない軽度の脱水の場合は医療用の経口輸液穎粒は水に溶かしてから使用しなくてはならないので,医師から市販のイオン飲料を勧められることが多いです。しかし脱水が改善した後はイオン飲料による水分補給は必要ないという指導は殆ど受けていないため、親はイオン飲料を水代わりにいくら与えても身体によい飲み物と思うばかりでなく,子どもも欲しがるので,それから後も,積極的に与え,習慣化してしまうことになります。イオン飲料を多量与えることは肥満の原因となるばかりでなく,食欲不振など全身に悪影響を与える恐れもあります。
②学童とイオン飲料(スポーツ飲料)
いろいろなスポーツで運動し,汗をかいたとき,イオン飲料(スポーツ飲料)を飲む傾向があります。これがきっかけとなりイオン飲料のペットボトルを持ち歩き,だらだら飲みの習慣がついてしまうと,乳歯と同じ理由で生えて間もない幼若永久歯がむし歯となってしまいます。
対策
○乳幼児に対して:
*過激な運動や極端に汗をかいたとき以外は,普通の水を与える。
*イオン飲料を水の代わりに使用しない。
*下痢や嘔吐でイオン飲料を飲ませたときは症状が軽快したら中止する。のどが渇いたときは普通の水を飲ませるようにする。
*寝る前や寝ながらイオン飲料を与えないようにする。夜中にのどが渇いたときには水を与える。
*入浴後は水を飲ませる。
*寝る前に歯を磨く。やむを得ず,寝る前や寝ながら与えるときは水を飲ませる。あるいは,与えた後に綿棒や指先にガーゼを巻き口腔内を清拭する。
○学童に対して:
*運動で汗をかくときはイオン飲料を薄めて飲み,運動が終わったら,普通の水を飲む。
*ペットボトルを持ち歩きいつも飲む習慣や,食事をしながらイオン飲料を飲む習慣を付けないようにする。
*のどが渇いたときは水を飲む。
4)歯に良い飲み物
歯に良い飲み物とは、口臭を予防する飲み物でもあります。
無加糖・無添加のストレート果汁
とはいえこれからの季節は各種清涼飲料水のお世話になることも多いでしょう。特に子供は本当にジュースが好きです。ほ乳瓶でジュースなどを乳幼児に飲ませる時には、こうした問題があることを心にとめておいてください。やむを得ずジュースを買う際には、無加糖で色素・香料等食品添加物が含まれず、濃縮果汁還元ではない、ストレート果汁が理想です。
疲れた体や神経に、ときには砂糖の甘味も必要ですし、発熱時や運動後のスポーツドリンクには意義があります。その飲み物の成分を考えて、その時に適した飲み物を選んでください。 むし歯の菌は糖分をえさにして増殖し、代謝をして酸を出します。その酸が歯を溶かしてむし歯の状態になるわけです。また、糖分は摂りすぎると歯だけではなく体のほかの部分にも影響します。血糖値が急激に上がってしまうため、興奮状態になったり、逆に不安になってしまう、疲れやすくなる、糖尿病を引き起こすなど体にさまざまな悪影響を及ぼすというデータもあります。暑くてしんどくても甘い飲み物のとりすぎには注意しましょう。摂るときは、適度にが大切です。
牛乳
前述の様に、牛乳はカルシウムを多く含み、アルカリ性に近い食品ですので、歯にとても良い飲み物であるといえます。
日本茶
お茶の中に含まれているカテキン(ポリフェノール)、フッ素などの働きにより抗菌作用に優れ、虫歯予防作用があります。仕事などで食後に歯を磨く時間がない時は、お茶で口をゆすいでおく事で、ある程度の虫歯予防となります。
抹茶、煎茶、玉露、番茶、茎茶、芽茶、粉茶、ほうじ茶、玄米茶、豆茶、釜炒り茶、玉緑茶など
ウーロン茶
発酵を途中で止める烏龍茶特有のポリフェノール(苦味成分)が歯垢の発生を抑えてくれます。
紅茶
紅茶にはフッ素も含まれているので歯をムシ歯から守り、丈夫にする作用があります。
ただし、ハーブティーの種類によっては、酸性度が高いものがあるので要注意です。
レモンティーは紅茶が酸性に傾いてしまうため、プレーンティーかミルクティーがお勧めです。もちろん砂糖はご法度です・・・。
ただし、お茶は歯の着色、汚れ、ステインの原因にもなりますので、その点は要注意です。
5)セルフ診断
次の項目をチェックして下さい。当てはまる項目は要注意です。
①スポーツ後の水分補給に酸性飲料を摂取している
②熱中症予防のために頻繁にスポーツ飲料を飲んでいる
③酸性果実を習慣的に摂取する
④乳幼児に対し酸性飲料を哺乳瓶で飲ませる
⑤車運転中に酸性飲料を摂取する
⑥仕事中に栄養ドリンクを摂取する
⑦アルコールのちびちび飲み
次回も乞うご期待!
|